マリア・カラスの絵姿は.....
cover このところさっぱり面白いジャケットに遭遇せず、本欄も不調。CHANDOS新譜のディーリアス『人生のミサ』はなかなか強烈だったけどね。まぁここに取り上げるには不向きかと。で、あまりにパッとしないので、もうこの際クラシック系にこだわらず、思い切って村田陽一&Solid Brassの『Double Edge』あたりを誉めまくっちゃおうか、などと思案していた。

しかしここへ来て遂にというか、これは!というのが出た。EMIからシリーズで再発売されつつあるマリア・カラスのリマスター盤である。シリーズ共通のデザインは、黒地にモノクロームのカラスの舞台写真、というシンプルな構成。これがじつに美しいのである。

編集者はがんらい、アーチストの写真なんか貼り付けただけのジャケットは好きではないのだ。髭のオヤジが劇場の前で渋面つくってるような写真をCDにレイアウトするヤツの神経が分からない。まだ泰西名画か何かをそのままあしらった手抜きジャケ絵の方がいくぶんは増しである。

しかしながら、このカラスの舞台写真はどれもこれも、美しい。そして何かドラマチックだ。一枚の写真が、この稀代の名歌手がほんとうに『女優』としても一流であった、ということを窺わせるに十分なのである。シリーズはまだまだ続くのだろうが、これまでに発売されているものだけを並べてみても、それぞれの役柄を見事に演じたであろうカラスの、舞台姿をほうふつとさせる。

これまで一度もカラスのオペラ全曲盤を手に入れたことが無かった編集者は、このジャケ絵につられて、遅ればせながら2セットを手に入れた。『トスカ』と『カヴァレリア・・・ & 道化師』である。写真の迫力がきっと、音にも現れるであろうことを期待したい。 (1997.04.01)


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