1999.06.24
 小澤征爾氏がヴィーン国立歌劇場のシェフに就任する、というニュースが伝えられている。ニューヨークタイムスのWebサイトでは「予期せぬ展開」等と報じられているが、全く同感。編集者にとっての小澤さんは「オペラ指揮者」とはやや遠い場所に位置している。ヘネシーをスポンサーにしてヴェルディやプッチーニに少しずつ手を染めたり、サイトウキネンでフランスものや、その他の珍しいレパートリーを開拓したり、と意欲的ではあるにせよ、モーツァルトやヴァーグナー、さらにイタリア・オペラの主要なレパートリーを手中に収めているとは思い難い。そして、それらができずにシュターツオパーのシェフが務まるのだろうか。
 もちろん、シェフだから何でもできなければいけない、というわけではないのだろうが、そもそもヴィーンで彼が振ったオペラって、チャイコフスキーの一部の他にどんなものがあるのかな。R.シュトラウスの録音も少しあったかも知れないが。
 編集者は20年前から、小澤さんをアイドルと思ってきた。一時の熱狂はやや醒めたものの、いまでも彼の演奏をあまり否定的にとらえるつもりも無い。しかし、オペラとはなぁ.... この先の「展開」に注目したい。
 ちなみにボストン響の後任としては、バレンボイム、ラトルあたりが取り沙汰されている模様(*)。また小澤さんと同じく2002年に契約の切れるマズア(NYP)の後任にヴェルザー=メストの名も挙がっているそうな。

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(*)ニューヨークタイムスの記事をよく読み返してみると、この二人はアッバードが2002年にベルリンPOをリタイアする際の後任候補として挙げられていた。お詫びして訂正を。ちなみにボストン響の後任候補にはハイティンク、ラトルという説もある(未確認情報)。

1999.06.19
 ヘレヴェヘの交響曲第9番は、おおかた予想通りだったというか、昨年晩秋の北とぴあ音楽祭での公演を懐かしく想い出した。CDで有り難かったのは、演奏会での座席が前から二列目くらいで若干バランスが悪かったのを、じゅうぶん補正して聴けたことか。それにしても、この録音もジンマンの録音もそうなのだが、ソリスト(歌手)がどうしてもテンポについていけず苦労しているさまが印象的。身体で覚えたテンポ感はなかなか修正がきかない、ということなのかな。
 レコード芸術の最新号で嬉しかったことは、毎月お馴染みの特選盤プレゼントに当たったこと。'77年くらいから毎月欠かさず読んでいるが、こいつに当たったのは初めて。内田光子さんの『皇帝』、いつ来るか楽しみだなぁ(^o^)。

1999.06.16
 CDNowから待望の音盤が届いた。ヘレヴェヘ指揮によるベートーヴェン・交響曲第9番(仏harmonia mundi HMC901687)。いやー、5月の初めに注文してから、じつに1か月半近く待ったぞ。確かあのとき、サイトには1-2日で入荷するとか謳っていた筈だが(^_^;)。ま、細かいことは忘れよう。さっそく通勤の友にする予定。
 ここに書いても仕方ないような気もするが、苦言を少々。米国から個人でCDを購入する際には送料がばかにならないので、編集者の場合、できるだけ10数枚くらいはまとめてオーダーすることにしている。今回、ベトのお供には同じharmonia mundiからプーランクの無伴奏合唱曲集、CHANDOSのシベリウス交響曲全集(ギブソン盤)、そしてクーベリック他によるハルトマンの交響曲全集をお願いしていた。いちおう在庫状況も確認の上でだ。しかし、結果からいうと、シベリウスとハルトマンは在庫切れとやらで、ベトとプーランクの二枚のみ送られてきた。この二枚のために送料が$20強もかかったため、一枚あたりのコストが$20を超えてしまった。うーむ、予定が狂った(^_^;)。いちおう発送前に「これこれしかじかで二枚だけ送るが良いか」というメールは届いているのだが、期待大のヘレヴェヘ盤があるだけに拒否できない。少し口惜しいぞ。

1999.06.15
 来日中のフィンランド放送交響楽団の演奏会を6/03に聴いた。演目はレオノーレの二番序曲に、グリーグのピアノ協奏曲、そしてシベリウスの二番交響曲。指揮者がサラステ、ソリストはプレトニョフ。
 で、このプレトニョフが素晴らしかったのである。40歳台前半とは思えない、老成した演奏と云えなくもなかったのだが、ソロでの透明で深みのある音色や、オケに上手に合わせていくアンサンブルの見事さ等々、聴きどころ満載。サントリーホールのバックステージ席だったのでバランスはいまいち分からなかったが、編集者には絶妙と聴こえた。サラステもオケも、このピアニストではかたなしの感あり。
 で、例のスタインウェイ社協賛による20世紀のピアニスト・シリーズから、プレトニョフを入手して聴いてみる。オール・チャイコフスキー・プロで、しかも胡桃割り等のバレエ曲の自作アレンジまで入ってる。彼が指揮者になりたかった気持ちが、グリーグでの演奏とこのCDとでよく分かるような気がした。

1999.06.03
 1970年代に金管楽器と縁のあった方なら、ウィリアム・ウォルトン作曲『スピットファイアのプレリュードとフーガ』という作品をきっとご存知だと思う。他ならぬPJBE(フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル)がこの曲を録音していたからだ。編集者の場合もご多分に漏れず、ウォルトンとの出会いは『クラウン・インペリアル』でも2曲の交響曲でもなく、もちろん『ファサード』でもなく、まさにこの曲、この録音によって、であった(と思う)。
 NAXOSでウォルトンの交響曲1,2番や近代英国音楽を相次いでリリースし、編集者が贔屓にしている指揮者ポール・ダニエルが、新たにウォルトン管弦楽曲集を録音したのであるが、このオープニングが『スピットファイア−−−』。ほんとうに久しぶりに、ワクワクしながら聴いた。多少構えが大仰だったり、妙にくぐもった響きの、ヘンな録音だったりもするのだが、お気に入りの一曲だから、ぜーんぶ目をつぶる(^_^;)。NAXOSの英国系作品のプロジェクトは、どれも目が離せないが、ダニエルのウォルトンはそれらの最右翼として、引き続き注目している。

1999.06.01
 昨夕5月31日は東京・新宿オペラシティでBach Collegium Japanの定期演奏会を聴く。1999年シーズンのオープニング、ソリストにテュルク、コーイ、ロビン・ブレイズが揃い、さながら4月の『マタイ』を彷彿とさせる。またコンチェルト・パラティーノのトロンボーン・セクションがゲストで登場。バッハのカンタータでトロンボーンが用いられるものはたいへん少ないのだそうだ。
 演奏会はいつもながらの充実したもの。前半にトロンボーンが配された2曲、休憩を挟んでの後半は、お馴染みの147番『心と口と行いと生活』(だったっけか)。編集者的にはここのところお気に入りのブレイズに再会できたこと、そしてコンチェルト・パラティーノの名技に大満足。


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