1998年8月11日

編集日記(1998.08.11分)

 サー・トーマス(・ビーチャム)大人の振るR.シュトラウス『英雄の生涯』の録音(TESTAMENT)、これは拾い物だった。予想に反してきびきびとスタイリッシュな演奏、RPOのびっくりするほどの妙技の冴え。ステレオ以外は聴かないなどと豪語していた編集者だが、このところのDUTTONやらTESTAMENTやらの、良い仕事に相当影響されている。
 ところでこの音盤のジャケ絵に写る二人の老人、他ならぬビーチャムとシュトラウスであるが、録音された1948年にはビーチャム69歳、シュトラウス84歳!! 写真からは二人の矍鑠たるようすも窺えるが、とにかくこの二人、完全に同時代人だ(当たり前だ、という声もあるかも知れないが、愚鈍な編集者はようやく気付いた次第)。『英雄の生涯』も『サロメの踊り』も、要するに当時の現役(とは云いづらいかも知れないが)作曲家による作品だった。たとえそれが後期ロマン派の最後の輝きであったとしても、ビーチャム翁は作曲家自身とスコアを仲良く参照できる立場であったわけで、あぁ、そういう時代だったのか、と不思議な感慨にとらわれる。

Posted by ナゾの編集人 at 1998年8月11日 18:04 | TrackBack