むかしむかし合衆国にて、グールドとバーンスタインがブラームスの第一協奏曲で共演することになった際、指揮者とピアニストが演奏解釈で意見の一致をみないまま本番に突入したのだという。指揮者は異例ながら、演奏前に聴衆に向かって事情をスピーチし、理解を求めたそうだ。
この話は半ば伝説化していたのだが、今般くだんのスピーチも含めたライブ盤が出た。これを音盤屋の視聴コーナーで聴いてみて、思わず笑ってしまった。
バーンスタインはさすがに話し上手というか、冒頭から「(わたしがいきなりスピーチなど始めたからといって)心配することはありません。グールド氏はちゃんと居ますよ」と笑わせる。いままでこの話を文章でだけ読んで、もう少し険悪な雰囲気なのかと思っていたが、わりあい和やかな様子。テンポ等に関する説明が多少あって「しかし今回あえて演奏会を開いたのは、この才能あるピアニストをご紹介するため」と、あくまでも寛容な姿勢を崩さない。
しかし笑ったのは次のフレーズ。「それでも皆さんは疑問を持たれるでしょう。協奏曲の演奏においては『誰がボスなのか Who is the boss?』と」。聴衆は爆笑。さすがにバーンスタイン、一枚上手だ。
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