ヴィンセント・ロブロット著『映画監督スタンリー・キューブリック』(晶文社)を読んでいる。この本、翻訳が今ひとつなのが残念(国内で公開された洋画の題名くらいは、調べて邦題を記しておいて欲しいし、ベートーヴェンのエロイカが「ホ短調」って原著もミスしてるの??)。しかし内容は、完璧主義者キューブリックのさまざまなエピソードを調べ上げており、なかなか読ませる。ここでは『2001年宇宙の旅』に関する部分で、音楽に絡むものを多少ご紹介してみよう。
かつて当通信で、クラークの『失われた宇宙の旅2001』に関する記事を書いたことがある。デモンストレーション用の試写で、キューブリックが撮影済みのフィルムに取りあえずあてたクラシック作品が何だったかをクラークが日記に書いているのだが、今回のロブロット作品にも以下のような記述がある。
彼は無重力空間にいる宇宙飛行士たちのシーンに、メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』を付けた。月と、実験段階にあった映画のクライマックスとも言うべきスター・ゲートの場面、それらにはヴォーン・ウィリアムズの『南極交響曲』を付けた。
さらに、こんなトピックスもある。
映画でディスカバリー号が出てくるシーンの最初の方で、フランク・プールが船の中でジョギングし、シャドーボクシングする場面がある。(中略)キューブリックは、編集用の下見でこのシーンにショパンのワルツを合わせた。キューブリックの考える、二〇〇一年に知性的な人が好む音楽だった。
ところで、『2001年宇宙の旅』には当初、アレックス・ノースによるオリジナルのスコアが付けられる予定だったことを、本書で初めて知った。映画監督のたっての願いで起用されたノースは懸命に取り組んだが、最終的にキューブリックは、この音楽の採用を断念したのだという。
二五年間も公開されずにいたアレックス・ノースのスコアは、映画音楽作曲家のジェリー・ゴールドスミスによって新たにレコーディングされた。そして一九九三年には、ジェリー・ゴールドスミスの指揮によるナショナル・フィルハーモニック・オーケストラが世界初演を行い、ヴァレーズ・サラバンドによって発売され、ノースの死後のたむけとなった。
これ、ぜひ聴いてみたいなあ。
Posted by ナゾの編集人 at 2004年10月31日 08:24 | TrackBackSu | Mo | Tu | We | Th | Fr | Sa |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 |